ごあいさつ
麻酔科医としての挑戦ブログ(哲弥先生)
分離肺換気 Part1
最近、呼吸器外科の麻酔をかけてきました。
定期的に呼吸器外科の麻酔は当ててくれます。
呼吸器外科の麻酔の特徴は簡単に言うと患側の肺は換気しない片肺換気です。
なぜなら、両肺換気だと肺が呼吸のたびに膨らんだり
萎んだりしてとても手術がやりにくいからです。
それを可能にするのが、ダブルルーメンチューブ(下記にあるような)という特殊な挿管チューブです。
気管支鏡というのを使って、このチューブの位置を微調整していきます。
微調整しても体位変換をするため、必ず再度位置の確認を行い、位置の修正が必要になることもあります。
呼吸器外科は上記のように、特殊な挿管チューブを使用しますが(術中管理も大変ですが)
もう一つ大変なのが、胸部硬膜外麻酔です。中位胸椎の硬膜外麻酔ということになりますが、
この部分の硬膜外麻酔は硬膜外麻酔の中でも最も難しく、更に年配の女性で難易度が高かったです。
ここで、硬膜外麻酔が入ると術中、術後の疼痛管理としてとても有用なのです。
思ったよりも早く硬膜外腔に到達し問題なく硬膜外チューブを進めることができてホットするも束の間、
ダブルルーメンという特殊な挿管チューブをいれて、
片肺換気にしたり、酸素濃度を色々かえたり術中にとにかく色々するので、
まだまだ余裕なく一苦労です。
無痛カクテル Part2
産科麻酔科学会で勧められていますが上記の図にあるように、
ブビパカインよりかは、レボブピバカイン、ロピバカインが推奨されています。
ブビパカインは脊髄くも膜下麻酔にはよく使われていますが
硬膜外麻酔として使用するときには0.125%~0.25%に希釈して使われるが、
心臓や中枢神経に毒性があること、潜在的な運動神経ブロックが言われており
無痛分娩としてはあまり適していません(特に今年に関してはロピバカインの供給不安定があり、致し方ない場合もあります)
レボブピバカインは心毒性がブピバカインに比べて低いと言われています。
ロピバカインは0.2%~1%までで使用できますが、
ブピバカインに比べて痙攣への閾値が高くより心毒性が低いと言われています。
上記は麻酔のバイブル書 Miller’s Basics of Anesthesia eight editionに記載してありますが
無痛分娩となると、ロピバカイン0.2%だと運動障害をおこす可能性があるために
大体0.1%程度に希釈するパターンが多いのではと推測します。
その分、オピオイド(麻薬:フェンタニル)を混ぜることによって
相乗効果で麻酔効果を強くし、運動神経を遮断しないという効果があります。
これらの薬剤のコンビネーションにより
お互いに量に依存した悪影響を減らすことができるのです。
当院では0.1%アナペイン(ロピバカイン)とフェンタニル2μg/mlという無痛カクテルを現時点では使用しています。
下記は母体安全のへの提言2023. Vol.14に記載している提言の一部です。
参考になれば幸いです。
無痛カクテル Part1
当院の帝王切開と最近の帝王切開傾向Part1
愕然という言葉を使ったため、愕然とされた例です。
最近、産婦人科の若い先生たちと食事する機会に恵まれました。
その先生の勤務している病院は
総合周産期センターでハイリスク妊娠、双胎、母体搬送で
受け入れたとても早い週数の分娩を扱っている影響もあり
帝王切開率は40-50%くらいここ数年経過しています(ホームページには書いてあります)
若い先生に聞いてみました。
井出産婦人科の帝王切開率はどれくらいだと思いますか??
少し考えて答えてくれました。
20%くらいですか?いや、流石にそんなに低くないですかね
との返答でした。
今年は4%くらいかな。昨年は5%くらいですよ。
その前は10%くらいで前後してたよ。
骨盤位の外回転術やダブルセットアップ(いつでも帝王切開できる体制で)で
経産婦さん骨盤位の経腟分娩や、何人かTOLAC(帝王切開後の妊婦さんが、経腟分娩をトライすること)
(これもダブルセットアップです)が上手くいった影響が大きいかな?と答えたら、
愕然とした表情をしていました。
一体どれだけの手間暇かけて、帝王切開を回避しているのか、
わかっていない若者に喝といいたいところです。
井出産婦人科において
TOLACに関してより安全であるためのいろいろな工夫があります。
無痛分娩は危険か?? Part2
備えあれば憂いなしというのは
まさに無痛分娩のときにも言えます。
想定されることに対する対処ができること。
想定される有害事象をいかに少なく
早期発見できるかどうかということだと思います。
そこについての理解など
無痛分娩を管理する医師を始め、
スタッフサイドがどこまでしているか。
そういった事によって安全性に
大変幅があると思います。
以前に比べると医療も標準化しており、
JALAという団体や各種団体、学会の努力のおかげで
幅は減少しているとは思います。
医療は常に進歩しております。
昔から無痛分娩をしている実績ある施設もございますが
どこまでUp dateできているのかが大事で、
現在の主流が一番安全と考えます。
母体安全への提言2023. Vol.14にありますが
初産婦さんの無痛分娩でびっくりするような無痛分娩、
無痛カクテルをかけているところがある
という事実もあります。
当院は、現時点で
初産婦様の無痛分娩を致しておりませんが
世の中にはビックリするような無痛分娩をかけている
施設がどういう状況であれ存在しているということに
提言の内容(当たり前のことですが、、)を読んだ時には愕然としました。
おそらく、他の初産婦さんにも同様の無痛カクテルを
使用していると想像できるため、、、、
妊婦様が安全な無痛分娩を提供する施設に
いかれることを切に願います。