ごあいさつ
麻酔科医としての挑戦ブログ(哲弥先生)
イギリスから出たビックリするような無痛分娩のガイドライン Part1
先日、現在麻酔科として勤務している病院で
カテーテルのくも膜下迷入を疑わせる症例がでました。
迅速な対応で、無痛関係のトラブルにはならなかったのですが
少し自分としては納得いかない部分や実はわかっていない部分があったために、
モヤモヤとしていました。
それは、テストドーズの量についてです。
夜中の分娩終了後にPubmed(医学分野の代表的な文献情報データーベース)というので検索をかけていました。
そこで、検索したら気絶するくらいの過激な?
(現在の日本の無痛分娩からすると)内容の論文が記載してあり、ひたすら読み漁りました。
たまには、患者様の感想もPart1
必要かと思い、一度思ったことを書いてみて下さいと頼んでみました。
忖度なしです。
今回4度目の出産で初めて無痛分娩をしました。
選択した理由としては痛みを軽くして産みたいのはもちろん、
最後の出産予定なので経験してみたいと思っていました。
計画分娩だった事もあり、その前に陣痛が来てしまう可能性もあったのに
無事に当日を迎えることができ予定通りに行えました。
私は最初の陣痛が来てから(10段階中3-4ほどの痛み)で硬膜外麻酔を入れて頂きました。
痛みは全然耐えれる時というのもあり
麻酔への少し怖さや緊張もありましたが思ってたより全然、
硬膜外麻酔の痛みもなく、こんな感じなんだ!っとホッとしました。
それから30分程して麻酔が効いてくると、
陣痛中なのに内診も痛くなくていつの間にか携帯まで触っていられる程
痛みがなくなっていました。
その頃、子宮口8cmだった事には驚きました!
そのまま、あれよあれよとすぐ出産となり、いきめるのかなぁと心配していましたが
無事にいきめていたようで出産できました。
ラストスパートの時に少しお股に痛みは出ましたが、
あの強烈な痛みと比べると全然余裕なまでの出産でした。
本当に、今自分は出産中なのに携帯を触っている時に不思議な気持ちでしかなかったです。
会陰切開となく、産後の処置も全然何も感じないくらい痛みがなくて
これが出産ならもう怖くないし、何度でもいけそうと思えてしまう程でした。
次、もし産むことがあっても絶対に普通分娩では産めない!と思ってしまいました。。。
産後に副作用(少し気持ち悪さや上半身の痒み)がありましたが
数時間でおさまり、それ以上に無痛分娩の凄さに感激しました。
人それぞれ同じようにいくとも限らない事だとわかっていても
私は無痛分娩を選択して本当に良かったです。ありがとうございました!!!
無痛分娩での出産を選択肢、本当に良かったです。
<私からの補足>
無痛分娩の鉄則は痛みの緩和より、安全最優先で受けて頂くということです。
今回、無痛分娩を受けて満足して頂きありがとうございました。
受けていただいているかたからは、だいたい皆様同じような感想を言っていただいております。
ラストスパートからの、お股の痛みというのはDPEというのを受けていただくと
より軽減されると思います(5万円追加になりますが、、、、)
当院としては、どのような形であれ(有痛、無痛)妊婦様やご家族様が安心して
満足してお子様を出産してくれるような環境を提供していきたいと思っております。
硬膜外麻酔の合併症 Part2
合併症のところを見られて、どのように感じられるかは個人差があると思います。
ホームページは頻度が書いていなかったため、
そこだけみるととても怖いと感じられる方もいるかと思います。
実際の頻度としては、とても低い。
そのため、あまりトレーニングや知識を受けてない施設のところも無痛分娩を開始し始めたところも実際あります。
一番の問題は、カテーテルの血管内迷入やくも膜下腔迷入が起こった時に適切に対応できるかどうかだと思います。
いわゆる、鎮静剤をうまく使えるか、
脂肪製剤を使えるか(備蓄があるのか:当院より実績は多いが実際はないところもあります)
気管内挿管はできるのか。
昇圧剤はうまく使い分けれるのかというところです。
また、麻酔カクテルは今どきの方法で
少量分割でしているかどうかというところです。
これらは完全に麻酔科が得意とすることです。
そういった意味でも、泥水をすすって麻酔科でトレーニングして
麻酔科標榜医を得たということは万が一の時の
妊婦さんの安全性に寄与したなと思います。
(逆に麻酔科標榜医がない状態で始めるのはある意味、危険だったなと思います)
硬膜外麻酔の合併症
照井先生という現在、産科麻酔学会の理事長をされている
先生が発刊されている硬膜外無痛分娩という本の記載で頻度が書いてあります。
私も、10年以上前、母体に関する会議の後の懇親会(大阪の千里中央)で
一度、大きな同じテーブルについて、お見かけしたことがありますが
豪快にビールを飲まれている姿が印象的でした。
当時、池ノ上克先生(元、宮崎大学学長、現在、九州医療科学大学学長)や
池田智昭先生(現在、三重大学病院長)、桂木真司先生(現在、宮崎大学産婦人科学教授)など
がおられて、緊張しならがらもちょっと裏話など色々聞けて、
刺激的な会だったと記憶しております。
(表)硬膜外無痛分娩の麻酔合併症と頻度
合併症 頻度
低血圧 17〜37%(17%)
硬膜穿刺後頭痛 1〜2%(0.7%)
背部痛 30〜40%(0.1%)
不成功 1.5〜10%(9.6%)
悪心 1〜2.4%(0.6%)
搔痒 1.3%(0.2%)
硬膜下注入 0.1〜0.82%(0)
血管内誤注入 5〜10%(0)
痙攣 0.02%(0)
クモ膜下誤注入 <1.6〜2.9%(1例)
全脊髄クモ膜下麻酔 0.02%(0)
放散痛(4〜6週間持続) 0.05〜0.42%(0)
運動神経麻痺 0〜0.14%(0)
硬膜外血腫 非常に稀(0)
硬膜外腫瘍 0.0015%(0)
(照井克生. 野口翔平. 硬膜外無痛分娩.南山堂.改訂4版2022 より引用、一部改変)
上記の横の()は埼玉大学総合医療センターでの2000年からの13年間、865例における頻度のようです。
当院でも同様以上の数字が出せると思っています
(埼玉大学ではおそらく当院に比べてBMIが高い妊婦様も受け入れている可能性があるため)。
ただし、そう痒感や悪心に関してはもう少し多いのではないかと推察します。
また、計画無痛分娩の影響か低血圧はあまり、発生しない印象です。
もちろん、数が少ないためもあると思いますが
いまのところ、発生しているのは悪心、そう痒感です。
2025年の始まりです。Part4
救いは救命士さんです。
彼らは挿管の同意書があれば、挿管トレーニングに来られます。
歯の状態や酸素化の状態などみてから、挿管可能だなと思ったら、
挿管の指導、お手伝いを致しますし、難しいかなと思ったら、こちらの判断で取りやめにします。
どういう結果になれ、彼らは始まりから終わるまで
ほぼ95%以上の人が礼儀正しい(昨年一人だけ駄目な人いたな、、、)です。
よろしくお願いしますに始まり、有難うございました。
大きな声で、姿勢もよく、それが普通なんじゃないのかなと思いながらも
Part2,3といった人たちのお陰でなんて素敵な人なんだと輝いてみえます。
相対評価って怖いなと思った瞬間でした。