ごあいさつ
麻酔科医としての挑戦ブログ(哲弥先生)
無痛分娩の際の血小板(血液を固まらせる機能がある)の値
当院では妊婦様全員に
妊娠後期に貧血や血小板減少がないか、
他の施設と変わらなく行っていますが
無痛分娩を受ける方に関しては、
入院時(無痛分娩をかける時)に必ず
点滴をとる際に、同時に採血を行います。
そこで血小板の値を確認するわけですが、
理由としては<抗血栓療法中の区域麻酔・神経ブロック ガイドライン>にも載っていますが、
硬膜外および脊髄くも膜下穿刺では血小板数が10万以上であることが望ましい。
8万未満での硬膜外穿刺、5万未満での
脊髄くも膜下穿刺は推奨されないと記載されおり、
これを遵守して硬膜外血腫脊髄内血腫の発生する
リスクに注意しております。
また、硬膜外血腫のリスクを軽減させるために
より小さい口径の穿刺針を用いることが望ましいと
記載されており今後の検討課題の一つと思います。
妊娠すると血小板は分娩まで減少傾向であり
(外国人のデータであるが、日本人も同様と考えています)
下記の図(Jessica A, et al. NEJM 2018 )にもあるように
妊娠後期より分娩時の時の値のほうが
より低い値のため、分娩時の値でもって
判断しようと思っているからです。
ただしTable2からは、ほとんどの合併症なき妊婦様は
10万以上であり、ほぼ問題ないと考えています。
緊急帝王切開 Part1
妊婦様の場合には状況が許せるのなら、
全身麻酔でなく脊椎くも膜下麻酔の方が
圧倒的に安全です。
先日、麻酔科として働いている病院で、
胎児心拍異常で緊急帝王切開がありました。
勤務している病院ではよほどのことがない限り、
全身麻酔は行いません(皆さん脊椎くも膜下麻酔などの技術が異常なほどレベルが高く時間がかからない)
駆けつけたときには、別の麻酔科医師が既におり、
脊椎くも膜下麻酔を行っていました。
(我々は到着後、状況をみて薬液の調整をその間に行っています:モルヒネの希釈や全身麻酔を想定した準備など)
みるからに困難な妊婦様で、
これで入らなかったら全身麻酔とおっしゃっていました。
素晴らしい判断でした。
脊椎麻酔困難なために、全身麻酔に切り替え、
他の麻酔科医師が全身麻酔を投薬し
私が気管内に挿管し、後は私が管理しました。
到着して5分くらいです。
麻酔科医を始めた頃はビビっていたけど、
いつの間にか色々なことを想定しながら
立場もわきまえつつ冷静に対応できるように
なったんだなーとしみじみと思った瞬間でした。
その後、硬膜外麻酔を入れようとしたが、
かなり難重してparamedian approachでなんとか入れたら8cm(針は8cmまでしか入らない、、)
と過去最高の深さの一人でした、、、
当院でも、無痛分娩を受ける人は
いつでも全身麻酔をかけれる準備はしております。
無痛分娩は危険か?? Part1
『無痛分娩って、結構リスクあるんだな』
というコメントを頂きました。
実際、リスクはゼロではありません。
リスクと言う言葉の解釈はとても難しいです。
ピルを飲む際に、血栓症のリスクが上がると
言われておりますが
実際、妊娠したほうが約10倍ほど高い
と言われております。
妊婦さんには血栓症のことあまり言わないのに、
ピルを飲むときには言うのは
言葉が少し独り歩きしている部分があるなと思います。
DPE(dural puncture epidural)に関してPart2
DPE(dural puncture epidural)に関して Part1
硬膜外麻酔に加えて、意図的に硬膜に細い穴を開けて
硬膜外腔に入った薬剤がくも膜下腔に入って、
より鎮痛効果を期待する方法です。
この方法だと硬膜外麻酔単独に比べて
麻酔の左右差が少なくなる可能性があるのと
分娩第二期における仙骨領域(殿部周辺)の
鎮痛効果に優れています。
CSEA針を使用して薬液を入れずに穴を開けて、
そのままカテーテルを入れる病院があります。
ただし、現在日本で利用できるCSEA針は
27Gペンシルポイントタイプのみで、
その効果に関してはまだ
十分なエビデンスがそろってないと考えられます。
それでも効果があると実感しているという
御高名な先生もいらしゃいますが、、、
25Gペンシルポイント針の場合には、
上記効果がある程度認められております。
将来的には、無痛分娩の主流になる可能性も
あると考えます。