ごあいさつ
麻酔科医としての挑戦ブログ(哲弥先生)
no.43 骨盤位の経腟分娩と無痛分娩
骨盤位で経腟分娩は当院でも滅多に行いませんが、
今回 無痛分娩と併用しながら経腟分娩を成功に至った
妊婦様に対して感想を聞いてみました。
===無痛分娩を経験して===
無痛分娩をしようと決断した理由としては、逆子の経腟分娩を希望していたからです。
近年、個人医院で逆子の経腟分娩をしている産院が少ないと聞く中で、
井出哲弥先生の元でなら可能だということから、経腟分娩でトライしてみようと思いました。
先生と話し合いを重ねる中で、もし分娩中に危険となり帝王切開に切り替えるとしても
無痛にしていると素早く切り替えることができること、
そして逆子のため分娩前に腟を広げる前処置があることを教えて頂き
より安全な方法かつ、少しでも冷静に落ち着いてお産に挑めた方がいいなと思い、
無痛分娩を決めました。
3回目のお産であることや、自分自身痛みに強いという自覚もあり
逆子になるまでは無痛分娩にする選択肢すら私にはありませんでしたが、
いざ経験してみて、今回は本当に無痛分娩にして良かったです。
前処置の痛みの不安からの開放、陣痛が来ているはずなのに張りすらそんなに感じないし、
陣痛中の内診すらも全く痛みない。
クライマックスの時に少し痛みは感じたものの全然耐えれる程度でした。
分娩後に少し気分が悪くなり嘔吐が一回ありましたが、
すぐに吐き気止めを注射してもらいすぐに良くなりました。
回復室では、麻酔をした部分の違和感や感覚が戻って来るムズムズ感?と
目がチカチカする(眩しい感じ)が少しありました。
それも数時間でよくなり、自力でトイレに行けるようになる頃には無くなっていました。
出産の翌日は少しだけ腰部に痛みがありました。
麻酔の副作用があったものの、あんなに人生で一番痛いと言われる痛みから
開放されるというのは本当にありがたい限りでしたし、無痛にして良かったなと思っています。
===逆子の経腟分娩を経験して===
井出先生の元で2回、妊婦健診や自然分娩を経験していることから
正直、逆子の経腟分娩に対して不安はほとんどなかったです。
リスクや色んな選択肢、可能性を話してもらい、
納得して経腟分娩を選択することが出来ました。
ただ、無痛の麻酔無しでこのお産が出来たかと聞かれると
絶対無理だったなというのが正直な気持ちです。
陣痛の痛みにプラスして頚管を広げたり、
腟を広げる処置の痛みも加わると思うと絶対耐えれなかったなと、、、
でもやっぱり産後の回復も早いし私はこの選択をして良かったなと思います。
<私からの補足>
感想ありがとうございます。そして無事な出産おめでとうございます。
私のもとでなら可能とお書き頂きありがとうございます。
骨盤位分娩の分娩管理に関しては父である井出哲正院長から教えて頂いたもので、
いわゆる伝統技術の継承というやつです。
私は、それに無痛を加えたに過ぎません。
Hannah M(統計学者と池田智昭先生はいってたような...記憶がありますが)らによる
超一流雑誌Lancetに2000年 骨盤位分娩するより
帝王切開の方が予後が良いと載ってから、世の中では一気に骨盤位→帝王切開と流れました。
そして以降、骨盤位分娩の継承者は激減しました。
私はこの、論文を若かりし時、何度も何度も読み直し
研究デザインの欠点などを思い賛成はしていませんでした(生意気だと思いますが...)
以降、産科ガイドライン2023にも単胎骨盤位の分娩様式についての
議論は継続しているようです。
ではなぜ、今回 外回転術を勧めなかったのかというと、
男児であること、殿部がすっぽり骨盤にはまって ずっと単殿位だったこと、
臍帯の位置は常に頭側にあって、まったく首にも何処にも絡まってなかったこと。
そしてなにより羊水が正常ギリギリ範囲の少なさであったことと
経産婦さんであったことです。
外回転術を行えば、問題なく回ったかもしれませんが、
経腟分娩の方が確かに成功率は高いと内診所見からも判断できたからです。
無痛なしの骨盤位分娩と少し感じは違いましたが、
今回の胎児にとっては臍帯血のPHはもちろん、帝王切開で娩出するより
遥かに負担が少なく娩出できたという印象です。
もちろん、いつ急変が起きるかわからないので待機の医師にいてもらうこと、
帝王切開の準備をした状態で分娩にTrialする。そういう備えのほうが大事だと思っております。
満足してご出産していただければとても、我々も幸せです。
これからも一人ひとりの患者様に満足してご出産して頂けるように
私が昔 誓った医療が、最近少しずつ提供できてとても良かったです。
当院はより患者様に満足して頂けるように、
少しずつではありますが変化を続けております。
やはりDPEはしておいた方が、より痛くなかったろうな、、、